リハビリテーション解体真書(もどき)

リハビリテーションを身体・環境・社会適応障害への治療として捉え、適応のメカニズムの基礎から勉強しなおしてみようという試みをつづったブログです。基礎知識中心に記事を書いていきます。出直しです。

人体の物性、とみせかけて結合組織のお話をします。

どーもみなさまお疲れ様です。
3月も残すところあとわずかとなりましたが、いかがお過ごしでしょうか。

3月と言えば、別れの季節。
別れの季節と言えば、そう、プレミアムなモルツ(祝! 新プレモル発売!!)。

ワタクシ、こんなに日々プレモルへの想いを熱く語り、
何かにつけて後輩にもプレモルを要求し続け(そして誰もくれない。。。。。
そろそろプレモル大使に任命されてもよい頃合いだと思いますのに(もう5年は待ってる。。。。。
先日研究の打ち上げで二次会にプレモルのあるお店に行ったんですけど、満席ですって断られたんでございます。


どういうことなんですか(怒怒怒怒怒!!!!!(※答:満席。

こんなに! 日々! プレモルへの愛を! 口にしている私に飲ませないとか!! なにゆえですか!!!(※答:満席。

そんなの、二次会中止して帰りますよワタクシは(憤怒)!!!(※帰れ。


とかこころの中で言ってみたんですけど、まぁ、ワタクシもほら、もういいおとなですから、
ここでさ、あれですよ、暴れてプレミアムなモルツの名を汚してもいけないかなってね、
なんやかんやでおとなの判断をですよ、してみまして、静かに一番搾り飲みましたとさ(※うまし。


と、いうわけで、本日からまた本題、というにはあまりにも逸れまくっている感のある、
人体における衝撃緩衝系のお話に移っていきましょう……とみせかけて。。。。。

今回からもまたしばらく衝撃緩衝系から話は逸れまくっていくわけですが、
基礎からトコトン復習するのが当ブログのコンセプト、というわけで、ご了承ください。


というのも、これからお話して参りますのは、何かと話題になっている筋膜について。

ヒトの衝撃緩衝システムには、粘性と弾性という性質が非常に重要です、という話から、
人体の物性を学びなおそうということとなり、これまで流体の性質についてとりあげてきました。

前の記事ではチキソトロピーを示す生物流体の一つ、滑液の性質をご紹介しましたね。

チキソトロピーとは、流体が力を受け続けると粘度が次第に低下して液状になるけれど、
力を取り除くと、再び粘度が上昇して固体状になる性質です。

かき混ぜたり揺らしたり、何らかの力を加え続けることでさらさらとした液体になるんだけれど、
力を加えるのをやめて放っておけば、また粘度が上がって固体状になってしまう不思議流体(※ルフィ風)のことでした。

そして、このチキソトロピーを示すのは、滑液ばかりでなく筋膜もなんだ、と記している文献があります(例えば参考文献)。

(ただし、筋膜がチキソトロピーを示すということには否定的な知見もあることもお伝えしておきます。
 筋膜がチキソトロピーを持つというのは、個人的な臨床感とは合うのですが、
 今後の研究次第で新たに筋膜の性質が明らかになり、将来の文献は書き変わるかもしれません。
 そういった文献や新たな知見を見つけたら、またここでご紹介して、治療について考え直していきたいと思います。)

というわけで、これから筋膜の話をしていくわけなんですが、
それよりまず先に押さえておきたいのが結合組織の知識です。

なぜなら、筋膜は結合組織の中の一部分にすぎないからなんですね。

膜組織の連結に関して以前解説したときに紹介しましたが、
骨格は骨膜―関節包―骨膜という膜組織で連結していき、
骨膜からは筋膜が起こって筋肉を包み込み、筋膜は停止部で再び骨膜と一体化し、というように、
人体は層構造をなす膜組織でひとつにパッキングされた構造をしています。

最近は、その中でも殊更に「筋膜」だけがクローズアップされている印象がありますが、
実際には筋膜も含む結合組織のつながりとして、人体をパッキングしてくれている膜のシステムをとらえる必要があります。

誤解を生みやすい言葉のひとつに、「fascia」というものがあるかもしれません。

この言葉を日本語に訳すときに、「筋膜」という訳語を与えたわけなんですけれど、
実際には「fascia」というのは筋肉だけでなく、内臓や骨など様々な器官を包む、シート状または帯状の組織を指すんですね。

ですから、全身を包む膜のシステムを理解するためには、
筋膜だけでなく、すべての結合組織について学ぶ必要があると考えています。

チキソトロピーどこ行ったんだよ、という声は聞こえないことにして、
そんなわけで、本日からはしばらく、結合組織のお話を基礎からしていきたいと思います。

(続く)

【参考文献】
Celia Bucci(著)・大谷素明(監訳):エビデンスに基づく疾患別クリニカルマッサージ―評価と治療, 丸善出版, 2014


 

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運動によるCOPDの改善効果・脂肪肝の改善効果

どーもみなさまお疲れ様です。
まだまだ寒い日が北国では続いておりますが、プレモルを飲みながらいかがお過ごしでしょうか。。。。。

本日は2つほど、この疾患に運動は改善効果があるかも、と示してくれた研究をご紹介します。

まず1つ目は、大阪市立大学の杉山氏・浅井氏・平田氏らのグループによる報告。

身体活動性の維持・改善がCOPDの予防・治療に寄与する可能性を示唆
http://www.osaka-cu.ac.jp/ja/news/2016/170306

現在、我が国においてCOPDの患者さんは500万人以上いるとされていますが、
COPDの治療は気腫化により低下した肺機能を、気管支拡張剤により部分的に改善するにとどまっているのが現状です。

気腫化の治療・予防のため、COPDの病態解明や新たな治療法の開発が望まれているわけですが、
そこで今回研究グループが注目したのがアイリシンという物質とCOPDの関係。

アイリシンというのは、筋肉由来のマイオカインの一種です。

マイオカインは筋収縮により分泌され、脂肪を燃焼させる効果がある他、
機序は不明ですが、癌の抑制や免疫機能の亢進、アルツハイマー型認知症予防などの効果があることが知られています。

以前、研究グループはCOPD患者の血中アイリシン濃度が健常人に比べて低下しており、
運動によって改善することを明らかにしたそうで、今回はさらにCOPDとアイリシンの関係をつきつめていったわけですね。

通院中のCOPD患者40名を対象に研究を行い、
その結果、血中アイリシン濃度は身体活動性と相関を示し、
胸部CT上の気腫化はアイリシン濃度と強く逆相関していることが判明しました。

さらに、気腫化の原因としてタバコの煙が影響するとされておりますが、
細胞実験を実施したところ、アイリシンで処理することで肺胞上皮細胞のアポトーシスが強く抑制されることもわかりました。

マイオカインは筋収縮により分泌されるわけですから、運動習慣の定着や身体活動の維持という点で、
予防の観点からもリハビリテーションが役割を果たせる可能性が示唆される報告です。


もうひとつは筑波大学からの報告。

運動プログラムにより非アルコール性脂肪肝の脂肪蓄積と硬さの両方が改善
http://www.tsukuba.ac.jp/wp-content/uploads/170227shoda-1.pdf

非アルコール性脂肪性肝疾患(以下、脂肪肝)は、飲酒歴はないものの、糖尿病や肥満などの生活習慣病と関連して、
肝細胞に余分な脂肪が蓄積してしまうことで肝機能障害を起こす病態です。

今回、筑波大学の正田純一教授らの研究グループは、中年肥満男性61名を対象に、
運動プログラムの種類と強度の違いが脂肪肝の肝脂肪蓄積と硬度に及ぼす影響について検討したそうです。

対象者はランダムに、

①レジスタンストレーニング群
②高強度インターバルトレーニング群:180kcal消費
  (プロトコル:自転車訓練でVO2max80-85%・3分→50%・2分→VO2max80-85%・3分→50%・2分→VO2max80-85%・3分)
③注強度持続性トレーニング群:360kcal消費
  (プロトコル:自転車訓練でVO2max60-65%・40分)

の3群に分けられ、1週間に3回の頻度で12週間にわたるトレーニングに参加しました。

その結果、3群すべてで体重および内臓脂肪の減少を伴わずに、脂肪肝の肝脂肪蓄積は同等に減少し、
肝脂肪蓄積は運動トレーニングの種類と強度に依存せずに改善することがわかりました。

しかし、高強度インターバルトレーニング群においてのみ、
脂肪肝の肝硬度の改善と、クッパ―細胞の異物貪食機能の改善が認められました。

クッパ―細胞は肝血管の内皮に接着しているマクロファージの一種で、肝臓の炎症病態の誘導に深く関与しており、
クッパ―細胞の貪食機能低下は肝障害の原因として重要であることが指摘されています。
(一方で、クッパ―細胞の機能亢進状態は非アルコール性脂肪肝炎の原因として重要とされています)

また、高強度インターバルトレーニング群においてのみ、抗酸化ストレス応答遺伝子の発現増加が認められました。

以上の結果により、脂肪肝の肝脂肪蓄積は運動の種類と強度によらず減少しますが、
高強度インターバルトレーニングにおいてのみ肝硬度が減少し、
脂肪肝の肝臓における炎症と酸化ストレス病態を抑える方向に働いたため、
肝硬度が増加している進行した脂肪肝に対して有効な運動であると言えます。

脂肪肝の病態改善のためには、規則的な運動を、
徐々に運動強度を増加させながら実施していくことが有効であると報告では結論付けています。

内部障害に対しても、こうして運動の効果が明らかにされることで、
リハビリテーションの必要性をわかりやすく患者さんに説明できますから、心強いですね。


 

表情コミュニケーションにおける影響は感情から認知へ作用する

どーもみなさまお疲れ様です。
今日もプレモル、飲んでおりますか???

私は研修と学会抄録が一段落し、ようやく落ち着いたところですので、
当然、プレモル、右手に持っておりますよ。
何なら、左手に持ちかえることもできますよヤハハ!

ついでに両手に持って、肘を屈伸すれば筋トレができますね!!

そして爽やかな汗をかいた後に、爽やかな気持ちでプルタブを起こせば、
そう、ビールシャワーですなヤッハハハハ!!!(※もったいない。。。。。


※疲労により精神がやや荒廃している模様ですが、ご了承ください。。。。。


さて、本日は表情を通したコミュニケーションにおいて、
脳内で感情が生起するのが先か、認知的な部分が働くのが先か、ということを調査した、
京都大学とATRの研究グループによる非常に興味深い研究を紹介いたします。

表情コミュニケーションでの影響は感情から認知
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research/research_results/2016/documents/170223_1/01.pdf

動的表情(表情の動き、たとえばいつもの表情→笑顔など)を見ると、様々な感情が生起すると共に、
脳内において多様な認知処理が遂行されることが、これまでの心理学的研究により示されています。

この認知処理には、表情の知覚、相手の感情の認識、相手の表情に合わせた表情模倣などが含まれ、
実に様々な処理が脳内で起こっているわけですね。

動的表情を見たときには、感情に関わるとされる扁桃体、
そして紡錘状回や上側頭溝などの認知に関わる大脳新皮質が活動することが報告されており、
扁桃体と大脳新皮質の活動との間には相関があることもわかっています。

しかし、これまでは扁桃体と大脳新皮質の相互作用が、どのような方向をもって生じるのか、
つまり扁桃体から大脳新皮質へ作用しているのか、それとも大脳新皮質から扁桃体へ作用するのか、
そのどちらであるのかは不明でした。

つまり、表情コミュニケーションにおいては、
感情が認知に作用するのか、認知が感情に作用するのか、どちらなのか、という疑問があったわけですね。

そこで今回、京都大学の佐藤弥教授らの研究グループは、
動的表情を見ている間の2実験のfMRIデータと1実験のMEGデータをなんやかんやで解析して、
(微分方程式を用いて脳領域間の因果関係を明確にできる動的モデリング法、だそうです。むずかし!)
扁桃体と大脳新皮質の間に順方向・逆方向・双方向の影響を与えるニューラル・ネットワーク・モデルを作り、
もっとも適合するのは3つの中のどれなのか、ということを検討したそうです。

その結果、fMRIとMEGによる3つの実験データに共通して、
扁桃体から大脳新皮質の方向に影響があるというモデルが最良である、ということがわかりました。

さらにさらに、MEGで得られたデータの解析結果から、
扁桃体から大脳新皮質への影響が0.2秒という非常に早い時間で現れることもわかったそうです。

つまり、表情の変化を見たときには、まず感情が生起して、
すばやく新皮質による認知処理を調整している、ということが示唆されるわけです。


まずは感情ありき!

ひとまず表情に関しては、ですけれど、しかし面白いですねぇ。


 

脳梗塞に対する免疫細胞ミクログリアを用いた新しい細胞療法の成功

どーもみなさまお疲れ様です。
滑液の性質が説明し終わったところで、本日から数回はプレスリリースを紹介して参りたいと思います。


近年では、脳の機能の働きを考えるときには、
神経細胞のみでなくグリア細胞の機能もあわせて考えていかなければならないよ、
と言われ始めており、グリア細胞に関するさまざまな機能が明らかにされてきています。

グリア細胞は、その全体の体積が脳体積のほぼ半分ほども占めることから、
神経細胞の働きやネットワークを理解するだけでは脳の半分しか理解してないよ、
グリア細胞の働きやネットワークも理解しないとね、というわけです。

本日は、そんなグリア細胞のひとつ、ミクログリアを使うことで、
新たな脳梗塞への治療方法が開発できるのではないかという、興味深い報告です。

ミクログリアは中枢神経系に約5~20%存在するとされており、免疫を担当する細胞です。
マクロファージのような食作用を持ち、炎症や変性などで神経組織が障害を受けた際に活性化して、組織の修復に関わります。

このミクログリアには面白い性質がありまして、
それは状況に応じて、脳を攻撃する状態M1と、脳を保護する状態M2という2つの状態を取るというものです。

また、ミクログリアは血液脳関門を通過することができるうえ、脳梗塞病変に集まる性質も持つそうで、
脳を保護するM2ミクログリアの投与は非常に画期的な治療法となりえます。

ただ、これまでは副作用をもたらす可能性のある薬剤を使用することなく、
ミクログリアをM2状態に変化させることは不可能だったそうです。

しかしこのたび、新潟大学の下畑准教授らの研究グループが、
簡単な刺激によって脳を保護するM2ミクログリアに状態を変化させることができると突き止めたわけです。すごし。

その刺激とは、ミクログリアを脳梗塞に類似した環境にさらすこと、
つまり、酸素とブドウ糖の濃度が低下した状態に短時間曝露させる、というものです。

では、治療効果はどうだろうということで、
この簡単な刺激で、脳保護的なM2状態になったミクログリアを、
脳梗塞発症後1週間を経過したラットに投与したそうです。

そうしますと、脳内にたどりついたM2ミクログリアは、
脳梗塞病変の周囲で成長因子やいくつかの脳保護蛋白を増加させました。

さらに、病変における新しい血管の再生や神経細胞の再生が促進され、
運動感覚障害の回復が促されることも明らかになり、その治療効果も示されました。

t-PA治療は発症後3時間以内に始めなければなりませんが、
このミクログリア療法では、発症後7日後に治療を開始しても、
ラットのもとの運動機能の80%以上にまで機能改善の効果が得られており、
より広い範囲の患者さんに適用できる治療法となりえます。

ミクログリア療法は、iPS細胞や幹細胞と比較して細胞の操作が簡便で、
自身の細胞を低酸素・低ブドウ糖状態にさらすだけなのでがん化のリスクが少ない、という利点もあります。

可能な限り神経細胞へのダメージを抑えながら、後はリハビリテーションで心身機能の再建を目指す。

我々もますます、自らのできることを模索していかねばなりませんね!

詳細はこちら
http://www.niigata-u.ac.jp/wp-content/uploads/2017/02/290215.pdf


 

人体の物性:滑液の性質その4

どーもみなさまお疲れ様です。
バレンタインデーが近づいてまいりましたが、プレモルの準備は整いましたでしょうか。

お菓子業界の戦略になど振り回されず、大多数の方々がチョコを買い求めているところを、
いやいやそんな周囲の流れになんか乗らないよと、プレミアムなモルツをラッピング。。。。。

いいと思います。いいと思いますよワタクシ。
そういうところで、他との違いをアピールする。そういう戦略もいいと思いますよ。

みながプレモルを贈り合う。
みながプレモルをワタクシにプレゼント。。。。。


……………………………………………………うはっ。


それでは本日も滑液の役割についてぐぐっと迫って参りましょう。

前回は、滑液の役割のひとつである潤滑のシステムについてお話しました。

潤滑とは、物体同士の摩擦をできるだけ少なくすることであり、
滑液は関節面と関節面の間に存在することで関節の動きをなめらかにする、まさに潤滑剤であると説明しました。

それでは潤滑はどのようなメカニズムをもって摩擦を少なくするのかというと、
「流体潤滑」と「境界潤滑」というふたつのメカニズムがあるのでしたね。

前回は「流体潤滑」について解説しました。

流体潤滑とは、関節面の間に潤滑膜が形成されて片方の関節面を浮かせることで、
摩擦面どうしを接触させず、滑らかな動きを達成するものでした。

流体潤滑は、滑液自身の持つ力に対する抵抗力、すなわち粘性によってもたらされます。
つまり、滑液が自身の持つ粘性により加えられた負荷に対抗することで、潤滑作用が発揮されているということです。

これは、負荷が加えられなければ潤滑がなされないということで、
流体潤滑が働くのはある程度の速度でもって関節が動いているときに限られてしまい、
流体潤滑単独では、生体の関節における潤滑を説明することができません。

じゃあ動いていないときや関節の運動速度が遅いときにはどうするのかということで、
もうひとつの潤滑、「境界潤滑」が必要になるんですね。

というわけで、本日は境界潤滑について説明して参りましょう。

境界潤滑とは、流体潤滑のように厚い潤滑膜が形成できない場合に、
分子レベルの膜でもって摩擦力を減らすものです。

関節の場合は、軟骨表面に高分子の膜が付着・吸着し、
その膜が関節面に加わる負荷に対抗すると考えられています。

ただですね、ここで注意しなくてはならないのは、実はこの境界潤滑、
滑液によりもたらされているわけではないかもしれない、ということです。

滑液中のヒアルロン酸分子が荷重面に接着することにより薄膜が形成され、境界潤滑が起こるとの報告がある一方で、
境界潤滑は軟骨の構造物であるという報告があるのですね。

二見俊郎氏らの1980年の報告では、軟骨表面にあるゲル状の物質をふきとった後の表面の摩擦は大きく上昇し、
そこに健常の関節から採取した滑液を再注入しても、潤滑は改善されなかったとされています。

もしも滑液の成分が軟骨表面に付着して薄膜を形成するのであれば、
また滑液を注入すれば膜は再形成されるはずです。

しかしながら潤滑は改善されなかったということで、
これは境界潤滑が滑液ではなく軟骨側の構造物によりもたらされる、ということになります。

また、境界潤滑には時間制限があるそうで。

関節に連続した静止荷重を加えて初動摩擦係数を測定した結果、
およそ30分の連続荷重後の測定で潤滑能が完全に消失したという報告があるそうです。

連続した静止荷重による摩擦変化は荷重時間によって増えていき、
良好な潤滑機能を維持できるのは、動かない場合はせいぜい数分程度ではないかと考えられるとのこと。

これは我々の動きの印象とも一致しますね。

朝起きがけに腰が痛かったり(私は特に休日に朝寝坊したときがひどいです)、
体がこわばって重く感じたり(プレモル飲めば軽くなりますけどね<感覚鈍磨)、
黙って立っているとすぐにつらくなるので、体を少し左右に動かしたり。

人間の関節は、やはり動いて機能を維持できるようになっているのですね。

さらに、境界潤滑は運動の速度に影響を受けることはありませんが、
流体潤滑に比べると生じる摩擦は大きくなってしまいます。

したがって、境界潤滑のみでも、関節の潤滑作用は不十分、と。

生体関節では、流体潤滑や境界潤滑といった潤滑システムが組み合わされて、
高い潤滑能を発揮しているのですね。

いやはや、ヒトのからだは本当によくできております。


【引用・参考文献】
・宇都宮初夫(監修)・片岡寿雄(著):4D-CTで解き明かす関節内運動学, 南江堂, 2014
・二見俊郎:生体関節の潤滑機構に関する研究―振動振子法による―, 北里医学 10, 435-445, 1980


 

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