リハビリテーション解体真書(もどき)

リハビリテーションを身体・環境・社会適応障害への治療として捉え、適応のメカニズムの基礎から勉強しなおしてみようという試みをつづったブログです。基礎知識中心に記事を書いていきます。出直しです。

歩行における慣性力の利用:訂正版

みなさまお疲れ様です。

当地域はなかなか台風が直撃するということが少ないのですが、
今回はわりと強めに当たりまして、遭難しそうになりながら出勤して参りました。

台風の日は休校ならぬおうちから出てはいけない宣言がなされるとよいのですが、
そうもいかないのが医療・介護の現場ですよね……がんばります、はい。

さて、本日は以前書いた記事に誤りがあったことに今更ながらに気が付きまして、その訂正版でした。

衝撃緩衝の話に戻るために過去記事をさかのぼっておりましたところ、
どーにもこの図はへったくそなうえにおかしいな(自分で書いたものです)と思い至り、
これは訂正しないと、と冷や汗をかきながらあれこれ考えておりました。

歩行における慣性力に関しての記載で、2015年の12月の記事です。
そちらの方は削除して、この記事へのリンクを結んであります。

何が間違っていたかと申しますと、歩行時の前額面状での慣性力の生成に関して、
遊脚側の外転筋の作用により重心の立脚方向への移動への急激なブレーキがかかり、
立脚側への慣性力が生成される、としている点です。

そう教わったからと思い込んでおりましたが、
改めてこの図を見ていて、そんな作用、遊脚側の外転筋にあるのかな、と思うに至りました。

もっと早く気が付くことができればよかったのですが、
これが認知バイアスというものですね、当時は疑問に思うことができませんでした。

セミナーでそう聞いたからそうなんだろうと、そう考えていたのですが、
セミナーの中で私が聞き間違ったのかもしれませんし、勘違いして覚えてしまった可能性も否定できません。

わざわざコメントまでいただき、立脚側の外転筋にも内転を制動することで慣性力を生成させる作用がありますと、
そうお返事しておりますのに、遊脚側で本当に外転筋がそのような働きをしているか疑問に思えなかったのは、
お恥ずかしい限りです。申し訳ありません。

今回、改めて文献を調べてみましたが、遊脚側に関する知見は見つからなかったので、
立脚側の外転筋による慣性力の制動に関して、改めて記載していきます。


歩行中のCOGはゆるやかな正弦波用の曲線を描いており、
単脚支持期の際に最も支持側に移動し、両脚支持期の際にはほぼ中央にある、というように、
右にいったり、左にいったり、という波を描いていくことになります。

しかしながら、単脚支持期の際にも完全に足部の上に身体重心が位置する、ということはなく、
単脚支持期の際には重心は支持基底面から外れているわけですが、転ぶことはありません。

これを可能にしているのが慣性力、ということになります。

立脚後期には股関節外転筋が重心を反対側に押し出し、
そうして対側下肢の立脚が始まりますと、重心の側方移動につれて立脚になった側の股関節が内転していくわけですが、
それを立脚側の股関節外転筋の作用により制動し、その際に慣性力も生成される、という形になります。

うん、どうにもわかりにくいので、具体的に右の立脚で考えてみます。

右の立脚初期には、左の立脚後期の際の左外転筋の作用により、勢いよく右方へと重心は側方に移動してきます。
それに伴い右股関節は内転してきますが、右の股関節外転筋群が働くことによって制動され、
その制動により生じた慣性力によって重心はその後もう少し右方に移動してから左方へと戻り始め、
右側の外転筋が再度作用して、重心は左側へ押し出される、ということになります。

時間のあるときにまた図を描きたいと思いますが
今は取り急ぎ、記事の訂正の必要があると思い、文章のみで掲載しております。
(へたくそなわりに時間だけはかかるんですよね……手書きの図……パタリ)

このように、左立脚後期の外転筋作用による重心の右方への移動を、
右の外転筋により制動しつつ、生じた慣性力で左の振り出しを可能にするための右への重心移動を行い、
右の立脚後期には再び右の外転筋が作用して左側へ重心を移動させ、
左の立脚が始まると今度は左側の外転筋の作用により左側への重心移動を制動し……
というように、前額面状の重心移動は紡がれていくわけです。

このように立脚側の外転筋が生み出す慣性力も利用して重心の側方移動を行うからこそ、
5cmという幅で重心を左右方向にキャッチボールするような、
円滑かつエネルギー効率のよい歩行が行える、ということになります。


今回は自分のいたらなさをつくづく感じて、もうがっくりきております。
思い込みはおそろしいですね……ほんとがっくりでございます。

記事を訂正してお詫びさせていただきます。申し訳ありません。

今後も間違いがあったり、考え方が変わって以前の記事はしっくりこなかったり、
ということが出てくると思いますので、定期的に振り返って訂正していきたく思います。

もっと自己チェックしなければ、と痛感した出来事でございました。
まだまだまだまだまだまだ、です。

深く反省しつつ、次回から衝撃緩衝系の記事に戻ります。

【参考文献】
山岸茂則(編):臨床実践 動きのとらえかた 何をみるのか その思考と試行, 文光堂, 2012


 

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『筋シナジー説』の神経基盤を解明

どーもみなさまお疲れ様です。
セミナーを企画しておりましたら、こんなに時間が空いてしまいました。

遠くから講師の方に来ていただいたセミナーが初ということもあり、
あわあわしているうちにブログ更新は滞ってしまいましたが、
地域のセラピストの方に非常にお得な値段で素晴らしいお話を聞いてもらうことができて、私としては大満足なんであります。

これは、講師の方が経費だけでいいよ、と言ってくれた、そのご厚意によるものです。

ただ、今回はそれでお願いしましたが、それだけではいけないなあとも思っていて、
どうにかこう、地域間の格差なく、勉強したいと思うセラピストが等しく知識にアクセスできて、
かつ教える側にもハッピーセットのおまけとかいちご煮以外の対価を受け取って欲しいんですよね。

どうにかならんものか、、、、、うーむ、新しいアイデアのためには、そう、プレモルが必要だ! そうだ! プレモル飲もう!!!

と、いうわけで(何が???)、本日もうひとつプレスリリースを紹介しまして、
また通常運転に戻っていきたいと思います。

本日は、2015年の「感覚は運動に変換される、しかも脊髄で!」という、
衝撃的な研究成果を報告してくださいました関和彦氏らの研究グループによる新たな報告です。

『筋シナジー説』の神経基盤を解明
―手指の多彩な運動を実現する神経メカニズムが明らかに―
http://www.ncnp.go.jp/up/1500619496.pdf


ヒトの運動は約400個の筋肉によって駆動される、約300個の関節の協調的な動きによって達成されているわけですが、
我々の神経系がそのように自由度の高い身体をどのように動かしているのかという問いは、
運動をとらえるうえで非常に大きな問題であり、様々な仮説が提唱されてきました。

例えば、古典的な捉え方であるピアノキー方式の制御のように神経系と筋骨格系の関係を考えますと、
脳の神経細胞のこれがこの筋を支配して、あの神経細胞があの筋を支配してと対応させて考えるわけですが、
この運動のときはこのA神経細胞とB神経細胞が発火して、
A筋を30%使って、B筋を50%使って、しかもその背景には姿勢制御のための筋も発火しているから、
その姿勢制御のための筋を支配する神経細胞がこれとこれで発火してうーんわからん! となってしまいます。

そもそも、そんな制御の仕方をしていては、神経系が行わなければならない処理は莫大なものとなり、
環境適応的な運動にとてもじゃないけれど追いつかない、そんな負荷には耐えられない、
ということになってしまう可能性が大きいのではないでしょうか。

これはコンピュータの制御上も大きな問題で、
例えばロボットハンドを開発する工学系の分野においてこのような考えで運動を制御しようとしたところで、
27個の筋と18個の関節から構成される手の動きを達成しようとしても、筋・関節の組み合わせのパターンは膨大なものとなり、
次世代コンピュータの処理能力を遥かに超えた計算を瞬時に行う必要があるそうです。

そこで、ロボットハンドの開発においては、「筋シナジー」によりハンドを制御しようという考え方が提唱されてきました。

多数の筋や関節からよく使われる組み合わせと、
その際に必要な活動パターンをあらかじめ複数作っておき(これがシナジーですね)、
実際にロボットを動かす際にその中から適切なシナジーを選択して使用することによって、
コンピュータにかかる制御の負荷を大幅に減らすことができるんですね。

今回、関和彦氏らの研究グループは、この「筋シナジー」に着目して、
「霊長類の神経系は筋シナジーの原理にもとづいて膨大な数の筋・関節を制御している」という仮説を立て、検証しました。

対象は、身体の中でもきわめて複雑な筋骨格構造を持つ手指の運動です。
手の筋シナジーが神経系の中でどのように表現されているのか、サルで調査が行われました。

実験では、サルにレバーをつまむ動作を行わせたときの脊髄の神経活動と筋電図を記録し、
その両者の関係を評価することによって、筋活動を作り出す脊髄神経の活動を記録したそうです。

結果として、脊髄神経の特徴は手指の筋シナジーと密接に関係していることが明らかになったわけですが、
これはもう、実際にリンク先にとんでいただいて、図を見ていただきたいと思います。
脊髄の神経活動と筋活動の関係が、美しく描き出されています。

具体例はリンク先を参照していだくとして、結果のみ記載しますと、
14個の脊髄神経において解析を行った結果、すべての神経はシナジー1からシナジー3の3つのパターンのうちの、
いずれかの筋の組み合わせを表現していることがわかりました。

また、個々の脊髄神経の活動はシナジーの活動と強い相関を示さないことがわかりましたが、
脊髄神経全体としてみると、脊髄神経の活動軌跡は筋シナジーと近似していることも判明しました。

この結果が筋シナジー仮説に与える重要な示唆として、

①理論上の原理であった筋シナジー仮説が、実際に神経系による手指の運動制御に用いられていることが証明された
②脊髄神経において筋シナジーが表現されていることが明らかとなった
③筋の組み合わせと活動の選択が、それぞれ別のメカニズムによって行われていることが示された

という3つをプレスリリースではあげております。

脳卒中の方々などの手指の機能の再獲得に関わる重要な知見であり、
今後の研究の進展から目が離せませんね!


 

脳梗塞などで脱落するニューロンを分裂させて補充する革新的な再生医療への期待

どーもみなさまお疲れ様です。
先日、はじめて石井慎一郎先生のセミナーに参加してきました。

とても熱いセミナーで、講習内容以外に語られるセミナーの方針であるとか、
石井先生が今行っているプロジェクトのお話であるとか、そう! それなんですよ! ともう共感しまくりでございました。

特に、ワタクシずっと疑問だったのが、石井先生のセミナーって、何で僻地にばっかり(※失礼)行くんだろと、
東京や関東など、主要な場所で開催されるセミナーがあんまりないのはなぜだろうと、そういうことだったのですね。

その理由もお話しておりまして、もう、すばらしいなと、感動しきりでした。

地方と都会のセラピストの情報格差は、本当に悩ましいのですよ。

例えば私の住んでいるところですと、東京にセミナーに行くとすれば、交通・宿泊費で4万ぐらい。
セミナーが1万ほどで開催されるとすると、地方の人間が1回都会に出るのと同じ金額で、
都会の方々は5回セミナーに出ることができるわけです(ひっじょーに単純計算ですが)。

当県に関していえば、開催されるセミナーは県士会が1年に数回有名な先生を呼べるかどうかで、
それも座学が多く、もちろん勉強になるんですけれども、継続的な学びを提供する場がありません。

個人の努力と言われれば、それまでなんですけれどもね。

同じ職場の若手の方々も、都会のセミナーに出たり、中央で働く同期と話したりするたびに、
情報格差を感じているようで、よく相談というか、愚痴を聞かされます。
そうなんだよね、、、、、としか言えないんですけれども(※涙。。。。。

しかし何より、そうなってくると、地域に住む方々が困るのですよね。

私は相当な地元大好き人間ですので(というよりおうち大好きな引きこもりですが、
この地域に暮らしている方が、この地域に生まれたばかりに、
ちゃんとしたリハビリを受けられないのは本当にやるせないのです。

だからもっともっと、学びに意欲のある人間が、
ひとしく情報に触れられる場があればいいのにと、願ってやみません。

じゃあもっと更新しろと、いう話なんですけどね……プ、プレモルが、、、足りない、、、、、(>結局それか。。。。。


そんなこんなで気を取り直しまして、
今回は脳血管障害の新たな治療法につながる可能性のある研究報告をご紹介!

「なぜニューロンは増えないのか?」
―脳梗塞などで脱落するニューロンを分裂させて補充する革新的な再生医療への期待―
http://www.tmd.ac.jp/archive-tmdu/kouhou/20170919_1.pdf

東京医科歯科大学総合研究機構脳統合機能研究センターの味岡逸樹准教授らの研究グループによる報告です。

ごく一部の部位を除いて、神経細胞は新しく増えることはない細胞として知られており、
それが脳血管疾患やアルツハイマー病などの神経変性疾患の治療を難しくしています。

リハビリテーション分野でも脳の可塑性により、
脳卒中後遺症の方々の機能は生涯変化し続けることができるんだ、ということはわかってはおりますが、
それは損傷を免れた部位による機能代償や、神経ネットワークの再組織化などによるものであり、
神経細胞自身の再生には、再生医療の発展を待たなければならないというのが実際のところだと思います。

しかしながら、じゃあなぜ神経細胞が増えないのか、ということに関しては、
その仕組みの多くが謎に包まれていたそうで、今回の研究でその一因が明らかになりました。

細胞が増えるということは、DNAが複製され、細胞分裂が繰り返される、ということです。

この一連の過程が細胞周期と呼ばれ、復習しますと、
G1期(DNA合成の準備)→S期(DNAを複製)→G2期(分裂の準備)→M期(細胞分裂)、となります。

神経細胞は、細胞分裂を繰り返す神経前駆細胞から主に胎児期において生み出され、
分化を開始すると同時に、細胞分裂が休止しているG0期に入ると考えられているそうです。

味岡准教授らの研究グループは、S期進行のブレーキとして機能するRbファミリータンパク質を欠損させると、
一部のニューロンが増えることをこれまでに発見しています。

で、このタンパク質を欠損する時期が、ニューロンが増えるかどうかを決定づけているそうで、
ニューロンには潜在的には増殖能力があるかもしれないことも報告しています。

一方で、脳梗塞やアルツハイマー病で観察されるニューロンの脱落の一部は、
Rbのリン酸化に続き、細胞周期をS期に進めてから細胞死を起こす、ということも過去の様々な研究から知られているそうです。

今回、研究グループはS期進行後にニューロンの細胞死を誘導するRbファミリー欠損モデルを作り、
M期進行のブレーキの仕組みを明らかにし、そのブレーキを解除する低分子化合物カンプトテシンを同定しました。

さらに、S期進行後にニューロンが脱落する脳梗塞モデルにおいて、
ブレーキ解除のカンプトテシンを投与することで、細胞分裂させることに成功したそうです!


現状では、脳へのマイナスの影響や癌化の可能性も否定できないそうで、
今後は脳梗塞後に分裂した細胞の機能を検討し、脳再生医療に使えるかどうかを検証していくそうです。

これは革新的な脳の再生医療に結びつく可能性がありますから、非常に興奮いたしますね。

そして、再生医療の知見について報告するたびに書いているような気がするのですが、
再生医療が発展すればするほど、じゃあ、回復した神経系にどのような運動を学習させるのか、
そんなセラピストのアプローチ法もさらに重要になってくると思われます。

再生医療が発展しても、我々が同じことをし続けていては、
片麻痺の方々は片麻痺像から抜け出せないままかもしれません。

どのように脳卒中のリハビリテーションを構築すべきか……

考え続けなければなりませんね。


 

脳の時計は右半球にある! 時間知覚判断の注意と意思決定システムを解明

どーもみなさまお疲れ様です。
ついに我が家にもソムソ社製の足部模型が届き、うきうきしております。

リンゴ箱ぐらいの大きさの箱に、足部の模型が入った小さな箱が衝撃緩衝材つきで入っているという厳重ぶりにびっくりいたしましたが、
ま、何分高いですもんね……そう、お高いですもんね……プレモル何本分なんだろ……(※ため息。。。。。

しばらくはプレモルを飲みながら、触り倒して生きていきたいと思います。
しかしいいですね、新しい模型が家にあるというのは。。。。。テンションだだっとあがります。


そんなこんなで、最新知見のプレスリリースのご紹介です。
本日は九州大学の飛松省三教授らの研究グループの成果について。

『脳の時計は右半球にある! 時間知覚判断の注意と意思決定システムを解明』
http://www.kyushu-u.ac.jp/ja/researches/view/167

脳は一見左右対称に見えますが、その機能に関しては、
言語や空間認知など、左脳と右脳が担う機能にはそれぞれ違いがある、ということは周知の通りです。

今回の研究では、「時間縮小錯覚」を用いて、時間知覚・判断に対応する脳内システムの局在が明らかにされました。

では、中身に入って参りましょう。

1秒未満の短い時間の知覚や判断は、音声言語や調和のとれた身体運動などに重要なのですが、
実際に知覚・判断している時間には物理的な時間とは異なる様々な錯覚があるそうで、
その脳内メカニズムはわからない部分が多く残されているそうです。

今回の研究では、「時間縮小錯覚」を利用した脳磁図の計測により、
実際に知覚・判断する時間に対応した脳活動をとらえたそうなのですが、
ワタクシ、今回初めて聞きました、「時間縮小錯覚」。。。。。

この錯覚がどんな錯覚かと言いますと、
ごく短い音で区切られた時間間隔:標準時間Sが単独で呈示されるときよりも、
Sよりも短い時間間隔Pを隣接させて呈示させたときの方が、Sが短く感じられてしまう、そういう錯覚だそうです。

ピッ、(標準時間S)、ピッ、と音を2回鳴らす間の間隔が、
先行時間Pを設けて、ピッ、(先行時間P)、ピッ、(標準時間S)、ピッ、と鳴らした時に、
PがSよりも短いとSも短く感じてしまう、という錯覚ですね。

この錯覚現象は研究グループの中島祥好教授らが発見した錯覚現象だそうです。

で、話を戻しまして、脳磁図での計測の結果、
時間感覚への注意と時間感覚の符号化は右半球の側頭頭頂接合部(TPJ)に、
時間判断は右半球の下前頭皮質(IFG)に司られることが判明したとのこと。

TPJと言えば、心の理論や自他の区別とのかかわりが深い場所ですが、
そこで時間感覚の符号化も担われているとは。。。。。

面白いですね~~~、と脳の話をしたところで、私はまた模型を触り倒す時間に戻ります。


 

結合組織に対する治療の考え方その4

どーもみなさまご無沙汰しております。
なかなか記事を更新する時間が取れず、にもかかわらずカウンターの数字が回り続けているのを見るにつけ、
わざわざこの場所に足を運んで(マウスをクリックして?)きてくださる方々には大変申し訳ない限りです。

先月は一回しか更新できませんでしたし(涙。。。。。

何故だ? 時間が足りないのか? プレモルが足りないのか? そうだ! 京都に行こう!(※錯乱。

あ、ちなみに京都といえば、ワタクシ、今月末の九州で行われる(←京都関係ないねぇ)、
日本支援工学理学療法学会に参加することになりまして(発表するのは私ではないですが、
初九州にウキウキしております。おいしいプレモル、あるかな……(※全国共通。


さて、そんなこんなで間があいてしまいましたが、再開して参りましょう。

数回前より結合組織へのアプローチに関して、結合組織の構造に基づいて考察しております。
前回記事から時間が経過しておりますので、さくっと復習しておきましょう。

アプローチの方法として、
まずは組織の流体性を妨げないよう、組織への押圧は最低限にしてそっと触れるということが基本となります。

その上で、結合組織の柔軟性を取り戻すために、

①熱伝導を利用する
②振動などの運動エネルギーを与えることにより、組織での熱産生を促進する

という2つの方法をご紹介いたしました。

本日は最後になります、筋膜のチキソトロピーという性質を利用する、ということについてお話していきます。

とはいっても、今回の内容は以前にチキソトロピーについて解説したことの繰り返しになる上に、
結局、手段としては振動など、穏やかな力を組織に加える、ということになります。

しかしながら、結合組織の構造や機能を具体的にイメージした上で、
もう一度チキソトロピーを示す筋膜へのアプローチを考えることが重要だと感じておりますし、
何より自らが行っているアプローチが、組織のどのような構造に基づき、どんな理由で効果をあげることができるのか、
そのことをきちんと頭に浮かべながらアプローチを行うことが、アプローチの精度を高めることにもつながります。

ですので、今回は繰り返しになる部分が多々ありますが、おつきあいいただければれば。。。。。


そもそもですね、何で衝撃緩衝のカテゴリについて話していたはずが、
結合組織の構造やら性質に脱線したのか、その理由を覚えておいででしょうか?

ワタクシ、すっかり忘れていたんですが、そもそも粘性やら弾性やらの性質を話していて、
チキソトロピーを紹介し、滑液や筋膜がチキソトロピーを示すらしいよ、というところから、
結合組織に対するアプローチを考える上で大事なこと、いっぱいあるなと、
結合組織に関する基礎をまとめておこうかなと、そんな感じで脱線して今に至っていたらしく。。。。。

いやあ、懐かしいですねえ(←懐かしんでないで更新しろ。。。。。

チキソトロピーについて復習しますと、チキソトロピーは流体の性質の1つであり、
流体が力を受け続けると粘度が次第に低下して液体状になるけれど、
力が取り除かれると再び粘度が上昇して固体状になる性質のことでした。

つまり、混ぜたり振動を加えたり、何らかの力を加え続けることでさらりとした液体になるのだけれど、
力を加えなければ、またねばねばした状態や固体状になってしまう不思議流体(※某海賊風表現)でした。

筋膜の液性成分、つまり基質がこのような性質を示すというのは、
私自身の身体感覚や臨床感とよく合います。

例えば寝起きや座位での作業など、同じ姿勢を取り続けた後に腰痛を生じたり、
長時間本を読んでいて肘を曲げ続けるなど、関節をしばらく動かさないでいると、痛くなったりこわばったりします。

しかし、ちょっと動いたり、肘を曲げ伸ばししているうちに、疼痛が消失する経験はないでしょうか。

これは短期間の変化ではありますが、動かさないでいたために結合組織の粘度が上がり、
組織同士の滑走が悪くなったり、血流が滞るなどして動かし始めに痛みや違和感を生じていたものが、
運動するという力が結合組織に加わることで粘度が下がって組織の滑走が改善したり、
運動による熱産生により基質の粘度が下がるなどして、痛みや違和感が改善された、と考察することもできます。

動かすこと、あたためることで基質は液状になって運動がたやすくなり、
不動や運動不足、冷えにより粘度が増加して運動を妨げるということです。

筋膜がチキソトロピー性を持つ、ということは、もう1つ、我々のアプローチに重要な示唆を与えてくれます。

チキソトロピーとは、力を「加え続けると」流体の粘度が下がる性質です。
したがって、ターゲットとした組織の流体性を改善させても、その部分をしっかり使って動かなければ、
つまり、アプローチ前の動作パターンや生活習慣が改善されなければ、結局はまた元に戻ってしまう可能性があります。

柔軟性を取り戻した身体でどのような動作をしていくのか、動作誘導もまた大事である、ということです。

(私は回復期に勤めており、ヒトとして根源的な運動である基本動作の獲得を主な目的としておりますので、
 動作「誘導」はしても、動作「指導」はほとんどしませんが、スポーツなどの分野ではまた違ってくるかもしれません。
 このあたりは学習の神経学的理解に基づいてアプローチを考えているのですが、機会があればご紹介したいと思います。)

もう1点、チキソトロピーとは直接は関係ありませんが、結合組織の柔軟性の低下についての重要な知見として、
不動による結合組織の変化の1つに、ヒアルロン酸の含有量の増加があることが報告されています。

ヒアルロン酸と言えば、美容の分野や膝関節への関節注射などで使用され、
皮膚においては栄養の運搬や柔軟性の維持、関節液においては潤滑性に重要な役割を果たすわけですが、
その正体は、ムコ多糖類であるグリコサミノグリカンの一種、つまり糖なんですね。

従って、ヒアルロン酸の含有量が増すということは、糖分の含有量が増すということですから、
ヒアルロン酸が過度に増加すると基質の粘性が高まってしまい、これまた線維の動きを阻害してしまいます。

この点からも、いかに基質の流動性を改善させるか、というのは、
結合組織にアプローチする上で欠かせない視点の一つと言えます。


脱線してしまいましたが、組織をほとんど伸長させない範囲でのゆるやかな振動を与えることは、
組織での熱産生を促して基質の粘度を低下させる効果があると共に、
チキソトロピーという基質の性質から考えてもまた、基質の流体性を改善させるために効果があると考えられます。

組織の液体成分を押し出さないように、押圧は最低限に触る。
手のひらからの熱伝導を起こす、おだやかーな振動を加えて基質の粘度を低下させ、柔軟性を改善させる。

基質の流体性が改善するということは、栄養や老廃物などの物質輸送や神経伝導を回復させることにもつながります。

もはや衝撃緩衝どこにいったんだ、ということで、ひとまず結合組織のお話は終わりになります。

次回からはプレスリリースの紹介に移りたいと思います。


【参考文献】
・舟波真一・山岸茂則(編):運動の成り立ちとは何か 理学療法・作業療法のためのBiNI Approach, 文光堂, 2014
・Celia Bucci(著), 大谷素明(監訳):エビデンスに基づく疾患別クリニカルマッサージ―評価と治療, 丸善出版, 2014


 

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